百貨店、実験中。| 松屋創業150周年 特設サイト

松屋は、150周年をきっかけに、 生活を豊かにするお手伝いを、 たくさんの実験を通して考えます。 多少のやんちゃはご勘弁を。 どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。

若手が「1日バイヤー」になる。Vol.4

2020.02.20 〜2020.02.21

ものづくりの現場を訪ねると、日々の仕事に変化は生まれる?

百貨店の仕事といって思い浮かぶ職種のひとつに、「バイヤー」があります。現地に足を運び、品定めをし、商談をして、売場にモノを並べる。小売の醍醐味のような仕事ですが、実はバイイングに携われるクルーは、あまり多くありません。松屋ではこの度、「ものづくりの現場」をあまり目にすることのできない若手たちに旅をさせてみたいと思います。WEBで何でも手に入る時代。私たちクルー自身も、産地や工房から遠ざかっていたかもしれないから。クルーたちは、向かった先で何を得てくるでしょうか。社内公募で集められた、初々しい「1日バイヤー」たちが、日本全国へ旅に出ます。

醤油を一から知りたくて。

普段は店頭で接客や販売に勤しんでいるクルーが、一泊二日で作り手の元を訪ねる本企画。第5回目は、生鮮・グロッサリー売場の相原諒です。

相原が訪ねたい場所として挙げたのは、福岡県の西部糸島市にある〈ミツル醤油醸造元〉。

 

その理由を尋ねると、

 

「僕が担当する売り場には、〈職人醤油〉というコーナーがあり、そこで接客をすることが一番多いんです。普段から何種類もの醤油を試食していますが、そのなかでも薄口でまろやかなミツル醤油さんの『生成り』が一番好きでした。」

「さらに蔵元の後継者である城さんは、35歳という若さでありながら、原料処理から製品化までを一貫して行う、今では珍しい自社醸造を行っています。美味しい醤油がどうやって作られているのか、自社醸造が行われる過程を見て学びたいと思ったんです」と語る相原。

 

入社2年目の相原は、普段から何種類もの醤油の味を比べ、自宅でも試して使うほど勉強熱心。

 

ものづくりの現場に足を運ぶのは初めてということで、意気込んで〈ミツル醤油醸造〉へ向かいました。

自社醸造を復活させる。

迎えてくださったのは、城 慶典さん。

 

昭和初期に創業した〈ミツル醤油醸造〉は、城さんの親族7人で切り盛りをする小さな醸造所。城さんは醸造の仕方を大きく変えたと言います。

 

城さんがまず案内してくれたのは蔵の中。

「僕は大学を卒業して2年ほどで蔵に戻りました。その当時、うちの蔵は自社醸造ではなく、醸造後の加工部分のみを行っていたんです。でも僕は、自分の手で一から作る自社醸造をしないと、自分が納得できる味の醤油は作れないと思ったんです。そこで、まずは蔵の環境づくりから始めました。」

 

蔵の環境づくりとは、具体的にどんなことを行ったのでしょうか。

「まずは、必要機材を徹底的に揃えました。また、麹を育てるための部屋や、木桶を置く場所が無かったので、大工さんに『部屋を増やしてください』と相談しました。当時は、大工さんに『醸造をするための部屋を』と伝えるのも、すごく難しかったですね。結局、準備期間は1年くらいで醸造を開始できたのですが、それまでのプランを練るのが大変でした。」

城さんは、東京の大学で醸造の勉強をしていた頃、全国の醸造所巡りをしたそうです。そこで学んだ蔵の環境や醤油作りのノウハウを活かして、蔵の大改造に挑んだと言います。

 

醤油作りにかける情熱があってこそ、この工夫の詰まった蔵が出来上がったというわけです。

 

蔵の中に並ぶ麹を見て、相原は「これはどんな状態ですか?」と質問を投げかけます。

「これは熟成中の麹です。普通、この麹箱はもっと小さいのですが、効率を上げるために大きいサイズの箱を依頼して作ってもらって発注しいます。布もメッシュの素材に変えることで、温度管理をしやすいように工夫しています。こういう小さなことも、醸造所巡りの中で学んだことなんです。」

1つ1つの道具にも工夫がなされていて、蔵の環境づくりに余念がありません。

 

醤油は、蒸した大豆と炒った小麦で麹を作るところからり、そこへ塩水を加えると、諸味(もろみ)という柔らかい固形物となり、最も時間がかかる発酵・熟成の工程に入ると言います。

 

こちらは実際に熟成中の諸味。

「熟成するとこんな色になるんですね!」と驚く相原。

味の奥深さを知る。

蔵の中を見終わると、試作中のお醤油も含めて、ずらりと並べ、食べ比べをさせてくださいました。

「例えばこれとこれは熟年数は同じですが、麹菌が違う。それだけでも味は全然違うんです」

 

麹の違いによる味わいの差を知り、醤油の奥深さをしみじみと感じることができました。

 

名前は同じではあるものの、麹菌の種類を変えたり、熟成年数の異なる醤油をブレンドするなどして、毎年新しい醤油を作っている城さん。

 

醸造所の一角には、たくさんの種類の醤油が並べられ販売されています。

新しい醤油を作るため、城さんはどんな想いで試行錯誤をされているのでしょうか。

 

「先代から受け継いだ製法や伝統を守ることも、大事なことだとは思います。けれど、僕はそれ以上に美味しいものを作っていきたいんです。そのために必要な箇所は、どんどん変えていきます。

例えば、この醤油はうちで作った甘酒を醤油に加えたものです。甘酒を加えることで塩分の尖りが削られて、まろやかな味わいになることを発見したんです。」

醤油の世界に魅せられて。

今回の訪問を通して、たくさんの学びがあったという相原。

 

初めて現場を訪れたことで、醤油に対する考え方が変わったとのこと。

「実際に一から醤油が作られる過程を見て、本当に複雑で奥深い世界なのだと思いました。麹菌や酵母菌の種類もたくさんあり、蔵の中のさまざまな要素が味に影響して1つの商品が生まれているのだなと。まだまだ僕は勉強が足りていなかったと反省したとともに、1つの商品に対して知識を深めることの大切さを学びました。」

また、百貨店の一員として「モノを売る」ことについても、感じることがあったそう。

 

「今回の訪問を通して、作り手の方が持つ、商品作りへのさまざまな想いを知ることができました。これまでの自分の接客を振り返ると、一方的に商品の良いところを伝えるばかりで、お客さまが何を求めているのか聞く姿勢が少なかったなと思いました。松屋に来るお客さまは、きちんと商品のことを理解してお買い物されている方が多いので、生産者がどんな想いをもって作っているかを、きちんと伝えていくことで、重要な価値になるのだと学びました。味の違いだけではなく、作り手の違いで商品を選んでいただけるよう接客していきたいと思います。」

 

 

売場を見ているだけでは、わからないコトがある。生鮮・グロッサリー売場・相原による小さな「旅」は、百貨店クルーとしての、大きな学びの旅になりました。

 

 

■相原の学び

・こだわりは、蔵の環境から味わいまで。

・より良いものを作るために、伝統を変えていく。

・1つの商品を深く知ることの大切さ。

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