百貨店、実験中。| 松屋創業150周年 特設サイト

松屋は、150周年をきっかけに、 生活を豊かにするお手伝いを、 たくさんの実験を通して考えます。 多少のやんちゃはご勘弁を。 どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。

若手が「1日バイヤー」になる。Vol.5

2020.02.12

ものづくりの現場を訪ねると、日々の仕事に変化は生まれる?

百貨店の仕事といって思い浮かぶ職種のひとつに、「バイヤー」があります。現地に足を運び、品定めをし、商談をして、売場にモノを並べる。小売の醍醐味のような仕事ですが、実はバイイングに携われるクルーは、あまり多くありません。松屋ではこの度、「ものづくりの現場」をあまり目にすることのできない若手たちに旅をさせてみたいと思います。WEBで何でも手に入る時代。私たちクルー自身も、産地や工房から遠ざかっていたかもしれないから。クルーたちは、向かった先で何を得てくるでしょうか。社内公募で集められた、初々しい「1日バイヤー」たちが、日本全国へ旅に出ます。

本金酒造は何が違うのか。

普段は店頭で接客や販売に勤しんでいるクルーが、一泊二日で作り手の元を訪ねる本企画。第5回目は、和洋酒食品売場の三村洸平です。

三村が訪ねたい場所として挙げたのは、長野県諏訪市に蔵を構える〈酒ぬのや本金酒造〉。

 

なぜ〈酒ぬのや本金酒造〉を選んだのか、理由を尋ねると、
「自分の趣味として、仕事として、さまざまなお酒を飲んできましたが、本金酒造さんの日本酒 “本金” は特に美味しいと感じました。調べていくうちに、少人数でお酒を造る酒蔵さんであり、関東圏で商品を扱っているのは松屋だけだということを知ったんです。どうやってこんなに美味しいお酒が造られているのか、どうしても自分の目で見てみたいと思いました」と語る三村。

 

入社6年目の三村は、休日に自ら酒蔵に足を運ぶほど勉強熱心で、日本酒が大好きとのこと。数ある日本酒がある中で、本金酒造は何が違うのか。知識と経験を持ち合わせた彼だからこそ、何かを見つけてくるに違いない。松屋は期待を込めて、三村を送り出しました。

お酒造りは、子育てだ。

迎えてくださったのは、代表の宮坂恒太郎さんと奥さまのちとせさん。

1756年代に創業した〈酒ぬのや本金酒造〉は、5人という少人数で経営しています。代表の宮坂さんが10年ほど前から車椅子生活になって以来、味のディレクションは宮坂さんが、実際のお酒造りは今井さんという杜氏の方と二人三脚でお酒造りをしてきました。

 

まずは、お酒造りを担当する今井さんに蔵の中を案内していただきました。

いよいよ、日本酒“本金”の謎に迫ります。

日本酒業界で機械化が進む中、その真逆をいくかのように、蔵の中に機械はほとんど見当たりません。

「僕たちは丁寧にお酒を造りたいので、機械はなるべく使わないんです。これは木桶といって、ここに洗ったお米を入れて水を吸わせます。自分たちでお米を洗ったあと、袋にお米を詰めて、その袋をかついでこの吸水場へ運んでいきます。それが結構重いんです……」と苦笑いしながら語る今井さん。

 

それなりの人数が必要に見えるこの作業。しかし、お酒造りを行うスタッフは全部でたった5人だけ。少人数で密にお酒と向き合っているそう。

 

こちらは、麹が作られる麹室。高温多湿の部屋の中には、麹の入った麹箱が布をかぶせられた状態でずらりと並んでいます。

お酒造りの中でも、重要な工程である麹造り。

その中でも、特に大事だという温度管理はどのように行っているのでしょう。

 

「麹は43℃を超えるとダメになってしまいます。昼夜問わず温度は変化するものなので、常に温度管理をしてあげなきゃいけない。機械で温度管理するところも多いですが、僕たちは自分の目で麹の状態を確かめたいから、機械を使わない代わりに温度計を使って確認しているんです。一日中目が離せないので、まるで子育てをしているような気分になります。お酒は、自分の子供のような存在なんです」

部屋の中には、使い込まれた温度計と湿度計が。

麹へかける愛情をひしひしと感じます。

続いて見せていただいたのは、水と、酵母によって発酵が進んだ麹がたっぷり入ったタンク。本金酒造では、これまでずっと地元のお米と地元の水だけを使ってお酒造りをしてきたそうです。

蔵の中を見学させていただいた三村は、念願だった日本酒造りの裏側を見れて大満足の様子。

飲み方まで伝えて、売ってほしい。

続いて、部屋に移動し、宮坂さんにお話を伺うことに。

「蔵の中を見学させていただきましたが、手作業を徹底したあの作業を4人という少人数で行われているとは、本当に信じられません」と開口一番に伝える三村。

 

「僕たちの酒造は、生産量は少ないけれど、その代わり、ひたすら丁寧に作ることにしているんです。ワインは原料のぶどうを食べても甘さを感じるけど、日本酒の原料のお米は、そのまま食べたら淡白な味ですよね? そのお米を丁寧に日本酒にしていくことで、お米を最大限美味しいものにしていく。そこが日本酒作りの一番の魅力だと思っているんです」

お話の途中に、日本酒を試飲させていただくことに。

さっき目の前で見たお米や麹が合わさってできあがった日本酒。三村、味わいながらお酒をいただきます。

 

ワインのように、日本酒をもっと気軽に、日常の中で飲んでもらいたいと願う宮坂さん。百貨店などに普段足を運ぶと、お酒売場で必ず見るのはワインと日本酒の比重。ワインがスペースをとっていると、「畜生!」と思うそう(笑)

 

そんな宮坂さんから、三村へ質問が投げかけられました。

「三村さんはどうやって普段日本酒を売っているんですか? お酒の味の説明ももちろんして欲しいけれど、欲を言うなら、飲み方まで伝えてくれたら嬉しいなあと思うんです。熱燗だと美味しいとか、どんな料理と食べると美味しいとか。例えば、このお酒は、みんな冷で飲むんですけど、熱燗にするともっと美味しくなるんですよ」

 

宮坂さんの言葉は、三村の胸にずしりと響きました。

手に渡った、そのあとを想像する。

今回の訪問を通して、たくさんの学びがあったという三村。

 

「一個の商品に対して、どんなストーリーがあるのか、どこでどんな原材料を使って作っているのか、自分の身をもって突き詰めていくにはやはり、作り手さんの元を訪ねることが大切だと再確認しました。自分の目で見て、作り手さんに直接聞いて得られる情報をお客様に提供すること、それは百貨店ならではの人間味ある接客に繋がると思います」

また、百貨店の一員として顧みる機会にもなったとも。

 

「宮坂さんから、このお酒はこう楽しんで欲しい、この料理と一緒に食べて欲しいと言われ、今までの自分は商品の説明で終わっていたなと痛感しました。作ったものをどう楽しむか、蔵元の方がそこまで考えているのだから、僕らがそれを伝えないのはとても失礼なことですよね。これからは、商品を売るだけでなく、お客様の手に商品が渡ったあとのことを想像し、商品の楽しみ方まで提案する、もう一歩上の接客をしていかなければならないと強く感じました」

 

 

売場を見ているだけでは、わからないコトがある。和洋酒食品部・三村による、小さな「旅」は、百貨店クルーとしての、大きな学びの旅になりました。

 

 

■三村の学び

・お酒造りは、子育て。

・日本酒をもっと身近なものに。

・商品の説明だけでなく、楽しみ方を提供する。

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