百貨店、実験中。| 松屋創業150周年 特設サイト

松屋は、150周年をきっかけに、 生活を豊かにするお手伝いを、 たくさんの実験を通して考えます。 多少のやんちゃはご勘弁を。 どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。

若手が「1日バイヤー」になる。Vol.6

2019.12.12 〜2019.12.13

ものづくりの現場を訪ねると、日々の仕事に変化は生まれる?

百貨店の仕事といって思い浮かぶ職種のひとつに、「バイヤー」があります。現地に足を運び、品定めをし、商談をして、売場にモノを並べる。小売の醍醐味のような仕事ですが、実はバイイングに携われるクルーは、あまり多くありません。松屋では、この度、そうした「ものづくりの現場」から遠い若手たちに旅をさせてみたいと思います。WEBで何でも手に入る時代。私たちクルー自身も、産地や工房から遠ざかっていたかもしれないから。クルーたちは、向かった先で何を得てくるでしょうか。社内公募で集められた、初々しい「1日バイヤー」たちが、日本全国へ旅に出ます。

和菓子を「売る」ことは、和菓子を「守る」ことでもあると気づいた。

 

 

バレンタインに和菓子。

普段は店頭で接客や販売に勤しんでいるクルーが、一泊二日で作り手の元を訪ねる本企画。第4回目は、和洋菓子売場の松岡奈々子です。

 

松岡が訪れたい場所として挙げたのは、京都、金沢と並んで日本三大和菓子処と言われる島根県松江にある〈彩雲堂〉。

なぜそこを選んだのか、理由を尋ねると、

「初めてバレンタイン催事を担当した時、〈彩雲堂〉さんがお茶のブースを作り、バレンタインらしい和菓子とお茶を一緒にお客さまに出されていたんです。バレンタインは普通洋菓子だと思っていたのでビックリしました(笑)。そんな新しい和菓子の楽しみ方を提案されている方に、一度しっかりお話を伺ってみたかったんです」と語る松岡。

 

入社2年目の松岡のお菓子へかける情熱は人一倍強く、普段から雑誌やSNSでのリサーチに加え、仕事が早く終わると他の百貨店や催事に積極的に行き、常にお菓子のことを考えているそう。

ものづくりの現場に足を運ぶのは初めてということで、意気込んで〈彩雲堂〉へ向かいました。

 

 

批判を恐れずに、新しい挑戦をする。

迎えてくださったのは、6代目店主の山口周平さん。

まず二人が最初に向かったのは、水木しげるロードにある〈妖怪食品研究所〉です。

そこでは〈彩雲堂〉が製造する『妖菓目玉おやじ』が販売されていました。

実はこのお菓子、SNSでどんどん広がり大ヒット中とのこと。配送なし、電話予約も不可、店頭に来た人しか買えないという斬新な売り方で、水木しげるロードで一番の売り上げを誇るそう。

 

歴史ある和菓子屋が、なぜアニメキャラクターのお菓子を作り始めたのでしょうか?

 

「和菓子の文化を絶やさないためには、まずお客様に和菓子を食べて頂く機会を作ることが大切だと思いました。特に若い世代の方に食べて頂きたくて開発のご依頼を受けました。最初は社内からも“老舗らしくない”という批判的な意見もありましたが、職人さんを説得してスタートしたんです」

大人気のお菓子が生まれた背景に、そんな経緯があったとは……。

仕事への並々ならぬ熱量を感じた松岡は、和菓子を作る上で何を大切にされているのかを山口さんに尋ねました。

 

「私には職人としての技術はありません。しかし、松江の町に根付いた茶の湯文化、そして先人たちが培ってきた伝統や技術を守りながらも、今の時代に沿った新しい商品やサービスを生み出さなければ、和菓子文化は継承できないだろうという危機感を常に持っています。試行錯誤の毎日ですが、全国各地に志を同じくする仲間がいることは大きな励みです。」

自分のことだけでなく、松江のお菓子、ひいては和菓子産業を見据えて挑戦する山口さん。

松岡は何度も頷き、その姿勢と情熱に感動したといいます。

 

 

自然を感じられる環境で、手作りの和菓子を製造する。

続いて案内されたのは実際にお菓子が作られている〈彩雲堂〉の工場。

工場にはたくさんの最新機械が置かれ、若手から年配の方までたくさんの職人さんが作業していました。

“機械に頼れるところはきちんと頼り、本当に大事なところは全部手でやる”というポリシーのもと、なんと『妖菓目玉おやじ』も、目玉のリアルさを表現するために手作業で行われていました!

こちらは現代の名工に選ばれた大江さん。新商品の開発中でした。

『現代の名工』大江克之が開発した新商品「福べ福べ」は本店限定販売。落雁と州浜生地を使った押し物と呼ばれる茶席菓子で、表面のデザインは季節によって変わる。

山口社長のアイデアと大江さんの卓越した技術により、次々と新商品が生み出される。「次々と無理難題を言われるので大変ですよ~(笑)」と大江さん。

 

 

熟練の和菓子職人が作る「あんぱん」の店。

次に向かったのは、出雲大社の参道にある「神門通りAel店」。

 

観光客がたくさん訪れるというこの店舗は、その土地柄や客層に合わせて、お店の名前や内装、お菓子の包装も本店と違うものを使用しています。

「出雲大社の参拝客、意外なことに若い世代が多いんです。この店の特徴は熟練の職人が毎日焼き上げる「あんぱん」です。和菓子の魅力を知って頂くための新しい入口として、この店を作りました」と山口さん。

 

和菓子を作らない経営者、とご自分でも名乗られる山口さんの“仕事”の一端を感じられるような話に、「ふむふむ、なるほど」と頷く松岡でした。

 

2月に開催される松屋バレンタイン催事では、彩雲堂コーナーにイートインを併設。「抹茶」だけでなく、松江市内にある珈琲専門店リトルコートコーヒーの「珈琲」や、出雲市にある來間生姜糖の「ジンジャーエール」など豊富なメニューを考案中。

「新しい商品を考える時、自社だけで考えるのではなく、地元企業の専門家の方と一緒に考えると“思わぬアイデア”が出ることがあります。そんな瞬間が最高に楽しいですね。今度のバレンタイン催事ではコーヒー専門店の「エスプレッソ」を使用した羊羹を発売する予定です。このようにして生まれたお菓子は地域経済も元気にしてくれると思います」

 

 

一個のお菓子につまった想い。

2日間を通して、和菓子の見方が変わったという松岡。

和菓子を扱う百貨店の人間として、「和菓子を守ること」についても考えさせられたといいます。

「実際に和菓子が衰退している現実がある中で、山口さんは周囲の反対を押し切って新しい和菓子を作ったり、新しい売り方を実践されていました。そんな勇気を持って挑戦する姿を見て、お和菓子を守るためには、伝統を残しつつ変わり続けることも大切だということを学びました」

また、百貨店の一員として「和菓子を売る」ということを顧みる機会にもなったとか。

 

「お店では何百円のお菓子ですが、そこには島根のいろんな人が互いに向き合い、本当にたくさんの想いが込められているということを知りました。私はそんなお菓子を大切に売らないといけないですし、きちんとその良さを伝えなければならないと痛感しました。これからはもっと作り手側に寄り添い、まずは自分がお菓子の良さをきちんと知る。そうしてお客さまに和菓子の良さを伝え、私なりに和菓子を守っていきたいと思います」

 

 

売場のモノを見ているだけでは、わからないコトがある。和洋菓子部・松岡による、二日間の小さな「旅」は、百貨店クルーとしての、大きな学びの旅になりました。

 

 

■松岡の学び

・伝統の味を残すには、多くの人に届く“かたち”と“売り方”を考えることが大事。

・機械も使う。でも最後は手で。

・人と人が繋がって良いものが出来る

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