百貨店はかつて、どちらかといえば商品が主役で、品揃えさえ間違いがなければお客様は集まってきてくれるという考え方でした。けれどもその商品は次第に同質化され、他店との差別化が難しくなっていきました。
そうした中、2016年に「もっとお客様軸での経営を」という考えのもと、顧客戦略部という新しい部署が誕生しました。そこが私の今の配属先です。どうしたらお客様と松屋の接点を増やし、深めていけるのかをお客様の視点に立って考える。お客様への価値を創造し、伝達するまでのマーケティング戦略を企画・立案する仕事です。
具体的には広告媒体の選定からイベントを打つこと、時にはサービスの底上げのために接客にあたるスタッフのモチベーションアップに努めることもあります。ひと言にお客様といっても、頻繁に足を運んでくださる方から、まだ一度も松屋にいらしたことのない方などさまざまな方がいるので、それぞれにどうアプローチするか考えると、やるべきことは多岐に渡ります。
この業務では海外からのお客様に対してどのように松屋を伝えていくかというのも大きな課題のひとつです。松屋では免税の売り上げが全体の20%を超えています。この割合が20%を超える百貨店は松屋を含め、日本にまだ3店舗(2018年11月現在)しかないんです。これについては、日本の人口減少などを考えるとこれから先のスタンダードになっていくといえるでしょう。
松屋は海外に拠点がないので、海外の金融機関と連携をすることで認知度アップを図っています。例えば、特定のクレジットカードを使用して松屋で買い物をしていただくと特典が付くような施策です。こうした取り組みのため、私自身も中国、香港、台湾、インドネシア、ベトナム、シンガポール、韓国、ロシアなど、年間6~8回程度の海外出張に出かけています。
銀座と浅草、たった2店舗しかないように見える松屋ですが、お客様は日本全国、そして世界中にいらっしゃる。活躍の場は世界というスケールの大きな仕事に携わることができるのです。
まず、私の経歴ですが、店頭部門、仕入部門、管理部門と多岐に渡った部署を万遍なく経験しています。
現在は販売促進部を経て顧客戦略部としてバックヤードで松屋を支える仕事をしていますが、最初は現場一辺倒。紳士靴売場にはじまり婦人服なども含めて8年、売場を経験しました。お客様と接する日々で感じたのは、「銀座の百貨店・松屋」への期待値。海外のお客様が見えると、世界から注目されている場所で働いている実感も生まれました。
その後バイヤー職に就くと、今度は作り手の方とお話する機会に恵まれました。商品が生まれた背景や生産者や作家さんの想いに触れ、その魅力をきちんとお客様に伝えなくてはという使命感も持つようになりました。
様々な職場を経験した上で感じるのは、松屋は自分がやりたいと思ったことを実現しやすい環境にあるということです。それは2店舗の百貨店であるという規模感に加え、あらゆる業界の人たちにとって銀座は新しい「コト」や「モノ」を発信してみたい場所であるということ。つまり何かチャレンジしてみたいと思ったときに、その挑戦を後押ししてくれる仲間がたくさんいるのです。大きなスケールで新たな挑戦をしたいという人にこそ、松屋はうってつけの環境なのではないでしょうか。
百貨店は小売業です。「とにかく幸先の明るい業界です」とは言い切れないかもしれません。ただ、私が言えることは、松屋は銀座と浅草という場所にお店があることの絶対的な優位性です。
日本は人口減少の一方で東京への一極集中の傾向にあります。また地方にお住いの方でもお買い物は東京に来るという方も少なくありません。一極集中は国の課題ではありますが、地方の状況が厳しい今、東京に2店舗、しかも海外からのお客様も多い銀座と浅草にあるということが、松屋の大きな安定材料になっています。
もちろん自分たちのお店が売れればいいということではありません。これまで松屋が銀座の街と共にあったように、これからも私たちがこの街の魅力を高めていくという使命を持ちながら一緒に成長していきたいと思っています。
- 紳士靴売場
- 婦人服売場
- 紳士カジュアル売場
- 紳士部 仕入部門(バイヤーを経て課長へ昇進)
- 販売促進部 販売促進課 課長
- 販売促進部 営業企画課 課長
- 顧客戦略部 顧客政策課 課長
- 顧客戦略部 部長